hidehirato’s blog 旧・あんずは怒り、そして笑うのだ

日々を味わうシンプルな暮らしで、仙人に近づきつつあるシニアのドキュメント

円熟  上下巻の悲劇


奇想天外なストーリー、流麗な文体、思わず上を向いて笑ってしまうギャグ、
そして必ず泣かせる、人としての美しい生き方。
浅田さんはそれを”粋”と呼ぶのでしょうか、

すごい本を2作読んでしまいました。
もー浅田次郎サン、円熟の極み。

あまりに素晴らしすぎたので、その後他の本が読みにくくてたまりません。
ぎくしゃく、という音が聞こえそう。

よそんちで読ませてもらう新聞なんて(ウチではとっていないので)、
これでもプロの書いた文かよ!と怒りが湧いてきて、
も~困ります~

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映画化、ドラマ化されたベストセラー 「 壬生義士伝 」 は
これ以上の時代劇は無い、と思ったもんですが、
いやいや、浅田さんは熟しておった!

「 赤猫異聞 」 
赤猫、とは牢屋の火事のことで、
焼死しないため一時的に開放された罪人たちが、
鎮火した後帰って来なければ死罪、といわれるんです。

身に覚えの無い罪で投獄されていた3人の罪人が、
自分を陥れた人に恨みを晴らそうとします。
そして、帰ってくるのか・・・・・・

読めない展開、読めない人物像、
細やかな筆致で、描かれていきます。
なめるように読みました。




「 黒書院の六兵衛 」

尾張藩の下っ端の武士が、
何の因果か江戸城無血開城の責任者になっちまうのですが、
そこには、物言わぬ武士が座っているのです。

この武士がまた、書院番”的矢六兵衛”に似ても似つかぬのに、
”的矢六兵衛”として勤仕(ごんし と読む)していたという、
いかなことにもミステリアスな展開。

上巻を数ページ読んで、パタっと潔く本を閉じました。
おもしろすぎる!
たまたま図書館で見つけて借りて来ていたんです。
ギアが入ってしまったら欲求不満になること請け合い。
そして通うこと数回、やっと下巻も借りられたので、
一気に読みました。
一気に読むのが惜しいほど、一文一文にリズムがあり言葉が美しいんです。
なのにギャグ入り。


そんなすごいのなら買えよって?
すんません。
ワタクシ鋭意、遺品(になるもの)整理中、なんです。
捨てることはあっても、物は増やすまい、とふんばっています。
宗教信じてもお布施をケチる信者のようですね。
ごめんなさい、作家さん。